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蜃気楼の塔~究明編~ ストーリー のバックアップソース(No.1)

&ref(蜃気楼の塔~究明編~エリアデータ/蜃気楼の塔 内部.jpg,nolink,240x130);

※○○にはユーザー名が入ります。



薄暗くどこか不気味な雰囲気の蜃気楼の塔の内部。
○○と神様たちは慎重に探索を続けていた。

「うぅ~、本当にいつ崩れてしまってもおかしくないくらい壊れています……!」

ナビィの言うとおり、塔の内部は激しく損傷している。
壁の亀裂からパラパラと落ちる何かの破片、歩けば不穏に軋む崩れかけの床や階段…どれをとっても損傷の酷さを実感させるには十分だった。

「おそらく、まだ塔が崩落する事はないだろう。クレプシード家の執事……ロイツェが話していた計画が遂行できなくなってしまうからな」

ヴァルキリー様が静かに口にする。
ロイツェ=クレプシード……。
今回、蜃気楼の塔を探索している最中に新たに出会ったクレプシード家の者だ。
ロイツェによれば、蜃気楼の塔の損傷はクレプシード家にとって深刻な事態であり『リダン』なる修復作業……塔のリフォームを計画しているらしい。
そして『リダン』が遂行される時、蜃気楼の塔や世界にどのような変化や影響が生じるのか……それは未だ不明なままだ。

「ロイツェが言っていた『リダン』なる計画、必ず俺たちで阻止しなければならないな」

ジークフリート様の言葉に一同が頷く。その時……。

「あれ?そこに誰かいるのかい?」

この不気味な塔内に似合わない、優しい声が響いた。


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「そ、その声……もしかして、ノイシュ……?」

ミディール様がおそるおそる声のした方角を見る。
すると、暗がりからゆっくりとノイシュ様が姿を現した。

「ミディール、それにエーディンや他のみんなも…。どうしたんだい?」
「あなたこそこんな場所でどうしたの?それに…デアドラがいないわね」

エーディン様の言葉にノイシュ様が睫毛を伏せる。
デアドラ様は城で育ったお嬢様だが、お転婆なところがありよく城を抜け出してはノイシュ様に会いに行ったり、戦場以外の場所に同行したりしている。
ここも危険地帯ではあるが、デアドラ様ならノイシュ様の制止を振り切ってついて来そうなものだ。 
「うん。少し前からデアドラの姿が見えなくてね。騎士団でも情報を集めてもらっていたんだけれども、なかなか有力な手がかりは無かったんだ」

そこまで話すとノイシュ様が懐から何かを取り出した。
どうやらそれは手紙のようだった。
上質な封筒は赤い蝋で封が施されており、中の便箋も美しい柄が繊細に描かれている。
だが、差出人は……。

「……なるほど。クレプシード家から、か」
「先日、これが僕の枕元に置いてあってね。どうやらクレプシード家がデアドラを……。僕が早く助けてあげないと、ね」

言葉は柔らかいが、ノイシュ様の声は怒りとも悲しみとも思える……そんな感情を含んでいた。

「それならノイシュもあたしたちと一緒にこの塔を調べましょ?あたしたちもクレプシード家にお仕置きしなきゃいけないのよ」
「……お仕置き?それはどういう事だい?」

ノイシュ様の疑問にナビィが今までの経緯を話す。
ナビィの話をゆっくり頷きながら聞いていたノイシュ様は、一度瞳を閉じて口を開いた。
その瞳には彼の強い意志が宿っていた。

「僕がデアドラを探している間にそんな事があったんだね。……それなら、僕も同行させてほしい。デアドラを……この世界を救うために僕にも尽力させてくれないかな?」
「俺には断る理由もないし、戦力は多いほうがいいだろう。他の皆はどうだ?」
「ぼ、僕もノイシュが一緒に来てくれたら心強いし……それに、一緒ならデアドラも、きっと見つかると思うから……!」

ノイシュ様の申し出にジークフリート様とミディール様が賛成する。もちろん、他の皆にも断る理由はあるはずも無かった。

「ありがとう。みんな、よろしくね」

ノイシュ様を加えた○○たちは再び塔の探索を開始したのだった。



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「あっ、みなさん見てください!」

ナビィの声に神様たちが駆け寄る。
そこにはいつも目にするあの黒い裂け目がゆらりと存在していた。
塔の損傷の影響だろうか、その裂け目はいつもより幾分か不安定に見える。
「ナビィ、すごいじゃない!これで先に進めるかもしれないわね」

塔はロイツェの力に阻まれて登り続けても1階に戻されてしまうため、何とかして奥へ進む方法も探していたのだ。
エーディン様に褒められてナビィは嬉しそうに笑っていたが……。

「さすがナビィだ。よし、ナビィには特別に私の新作スイーツを……」

ヴァルキリー様が笑顔で何か不穏な行動をしようとすると、ナビィは慌てて裂け目に向かう。

「こ、ここは危険かもしれませんし、奥に進みましょう~!ヴァルキリー様のお菓子が食べられなくてナビィ残念です~!!」
「なるほど。では、あとで休憩する時にでも……」

そんなやり取りの中、裂け目を見つめていたノイシュ様が、祈りにも似たような声で呟く。

「……デアドラ、待っていて。そして、絶対に世界を危機から救ってみせるよ」

○○と神様たちは、深い闇が手招きしているような黒い裂け目へと飛び込んでいった。
蜃気楼の塔の『リダン』を阻止し、デアドラ様を救出するために。
そして、蜃気楼の塔の謎を解き明かすために。
強き意志のもと、蜃気楼の塔を舞台に神様とクレプシード家の者たちとの、壮絶な戦端の幕が切って落とされた……!