時ノ欠片~第三章~ ストーリー のバックアップ(No.1)
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- 1 (2015-06-30 (火) 08:42:11)
「今日もキレイなたてがみだね、スキンファクシ!」
北欧の昼の神ダグは、彼の愛馬スキンファクシと共に空を駆け、自身の勤めをこなしていた。
スキンファクシは輝くたてがみを持ち、その光で世界に明るい光を届けていたのだ。
「次はソールも一緒に走る予定だから、今からとっても楽しみだね」
ソールは太陽の力を持った神であるため、ダグとスキンファクシに乗ることも多い。
スキンファクシもまた、ソールのことが気に入っていた。
青い空と白い雲のコントラストを眺めながら、ダグはいつも通りのルートを走る。
この日も通常通り、何事もなく仕事を終えることができそうだ。
――そう思った矢先だった。
がくり、とスキンファクシが前のめりに姿勢を崩したのだ。
「わっ!?スキンファクシ!ど、どうしたの……」
ダグがスキンファクシの足元を見ると、どうやら黒く大きな裂け目に前足を突っ込んでしまっており身動きが取れないようだった。
そしてその裂け目の中から、黒い腕が伸び、ダグとスキンファクシを引きずり込んでいく。
「ひえっ……ど、どうしたらいいんだろう!誰か……!」
辺りを見回したが都合よく誰かがいるわけもなく、ただただ裂け目へと飲み込まれていくばかりだ。
裂け目は、地面のない空の中に突如として現れたもので、空間の裂け目と言う以外表現しがたいものだった。
そして不可解な事に、あれだけ青く感じていた空色が、空間の裂け目を中心に灰色に変わっていく。
「えっ……な、何が起こっているの……!?す、スキンファクシ……!」
ダグが空間の裂け目からスキンファクシに目線を移すと、
スキンファクシもまた、みるまに空間の裂け目にたてがみの輝きを奪われ、灰色に染まってしまっていた。
「そ、そんな!スキンファクシが……!」
嘆きながらダグは、スキンファクシは、空間の裂け目へと姿を消してしまった。
空間の裂け目。
既に何度かこの現象を目撃している○○やナビィ、守護神は、話を聞きつけすでに動き始めていた。
しかし、今回の空間の裂け目は出現した場所の色を奪う現象を起こしており、
そしてこの現象は今までの空間の裂け目には見られなかったため、○○達に妙な緊張感を与えていた。
「一体何が目的なのでしょう……!」
ナビィも不安や焦りを隠せない様子だ。
「あっ!そういえば……」
「以前イリス様が魔神に捕まったとき、色を魔神に奪われていました!」
「色というのは、何か力があるのかも……?」
ナビィの意見に、○○は「なるほど」とヴァルキリー様のように相槌を打つ。
先ほどまで不安そうな面持ちだったナビィが笑顔になった。
「それなら、きっと取り返すことができますね!」
イリス様を助け出すことができたのだから、今回の事件も解決できるに違いない。ナビィはそう付け加えた。
解決策が見えて、強気になるナビィ。○○や守護神も同じく、俄然元気が湧いてくる。
そんなところに……。
「……あ、あの」
「ひゃあっ!」
ナビィの背から、か細い声が聞こえてくる。辺りがいつの間にか、夜になっていた。
「ご、ごめんなさい……!わ、私なんかが、声をかけてしまったから……」
「ノート様!こちらこそすみません〜!突然だったのでびっくりしてしまいました……!」
ナビィが振り向くと、黒い衣装に身を包み、青毛の馬を連れた女神――ノートが俯きぎみにたたずんでいた。
「あの……相談があって……」
「昼の神……ダグを見ていないかしら……」
「……彼の気配がしないのよ……嫌な予感がするわ」
ぼそぼそと呟くように訴えるノート。
夜の女神である彼女は、ダグと入れ違いで彼女の愛馬フリームファクシに乗り、空を駆けることが仕事であるため
ダグに何か異変があるものならすぐにわかるのだ。
「ナビィは見かけていませんが……」
「……そう……。実は……彼の走る道のりに、その……裂け目があったの」
「もしも、彼がその裂け目に入ってしまっていたら……うぅ、不安だわ……」
「そんな!そうだとしたら大変です〜!」
確かに、空間の裂け目は近くにあるものを取り込もうと腕を伸ばしていたことを思い出す。
ダグがあの裂け目の中に引きこまれてしまっていてもおかしな話ではなかった。
「ナビィ達も、あの空間を調べなくちゃと思っていたところなんです」
「……それなら、私も……力になれるかわからないけれど……」
「わぁっ、ノート様がお手伝いしてくださるならとっても心強いです♪」
視線を泳がせるノートにナビィが答える。ノートは恥ずかしそうに、しかし嬉しそうに小さく頷いた。
「よーし、それなら早速向かいましょう!」
「このままでは、世界中から色がなくなってしまうかもしれませんし……!」
ナビィの意見に賛成し、○○は装備を整える。
この事件の真相は、原因は何か?解決はできるのか?
それらの答えが出るかもわからないが、先に進まなければ何かを知ることもない。
「行きましょう……フリームファクシ、私達も……」
光と色を飲み込む裂け目へと急いだ。