甦れ!恵方のタマゴ ストーリー のバックアップ(No.1)
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- 1 (2016-01-01 (金) 11:21:17)
時間の流れがおかしい――
そう気がついたのは赤土の神様たちが開くパーティーでのこと。
あの時は、昼の時間が異様に短く感じた。
現在もまだ、その不思議な時間の流れ方を感じることが多々あり、
明らかに一日が長く感じたり、逆に一日があっという間に終わるように感じることもあった。
しかし、時計を見ても時の流れが別段おかしくなっている様子は見られず、
神様達も深く気に留めてはいなかった。
「どうしたらいいのかなぁ…」
日本神社に訪れた際に、カヨヒメ様と年神様が途方に暮れている姿を見る、そのときまでは。
「変だなぁ。いつもこのくらいの時期には大人になってるはずなのに」
年神様は年の初めに生まれ、一年の間に成長し、その次の年にまた生まれ変わる神。
時期的に、すでに大人の姿になっているはずの年神様は、いまだ幼い少年姿のままだった。
「年ちゃん……いつもはこんなこと、なかったのに」
「うーん、いくらなんでもおかしいぜ。カヨが言ってるなら間違いないし……」
カヨヒメ様や年神様も経験したことのない事態らしく、困っている様子だ。
「あれ?カヨヒメちゃんたちで集まってどうしたの~?」
「こ……こんにちは……」
声をかけてきたのは通りがかった吉祥天様と阿多福様の二人だ。
「あ、吉祥天と阿多福…あのね、年ちゃんの様子が変なの」
「様子?どこどこ~?」
「いつもだったらもう大人になっててもおかしくないだろ?けど今はそうじゃなくってさ」
「……ほんとうだ……!こ、子供のまま……」
吉祥天様と阿多福様も、年神様の様子を見ておどろいているようだ。
「年神くんが成長しないとどうなっちゃうのかな~?」
「年ちゃんが成長しないと……?えっと、大晦日来ないし、新年も迎えられないんじゃないかな……」
「とにかく、時間がおかしくなってるってことは確かだと思うんだよな!」
「そ、それ……大変、だよね……なんで、こんなことに……?」
原因は不明なようだ。
神様たちは顔を見合わせて、首をかしげていた。
「あら、これは?きらきら光っていてとても綺麗ですね」
「ん……?何かの破片か?」
所変わり、日本神社のとある一角。
首をかしげる神々とは離れた位置にある神社の並木の側で、
国御柱神が地面から何かを拾い上げ、隣にいた天御柱神に見せる。
「あまり見かけない材質ですね。宝石とも違うような……」
「確かにな。……ちょっと見せてくれ。どこかで見たことがあるような気がするんだよな」
「あら、天御柱神も?私もこれをどこかで見た気がして……」
龍の姿をした風の神々は数分、謎の破片を見つめてその正体を記憶の中から探る。
「あ!わかったぞ!年神のタマゴの殻じゃないか?」
「……まぁ本当だわ!天御柱神、よくわかりましたね」
「いや、ぱっと思いついたんだ。思い出せてよかったぜ」
「ですが……何故こんな所に年神のタマゴの殻が落ちているのでしょう?」
「そりゃ、年神に聞けばいいんじゃねぇか?」
「それもそうですね。探してみましょうか」
タマゴの殻を懐にしまい、二人はふわりと風に乗る。
そのまま空を舞い、目当ての神様のもとへ向かった。
「あれ、国御柱神さん、天御柱神さん。こんにちは」
「こんにちは。皆さん揃ってお話していたのですね。お邪魔だったかしら」
「ううん!今俺のことについて話してたんだぜ」
「ん?年神……お前まだその姿なのか?」
「そうなんだよ!普段だったら大人になってるはずだろ?こんなのおかしいぜ」
国御柱神様、天御柱神様がふわりと舞い降りながら合流する。
年神様の姿を見て、国御柱神様、天御柱神様も驚きを隠せないようだ。
「年神の言うとおりですね……何かの異変なのでしょうか」
「異変?え~大変~!ってことは、毘沙門天さんたちにもお知らせした方がいいかな~?」
「そのほうがいいかもな。おかしな事態になってるのは間違いなさそうだ」
「……じゃ、じゃあ…わたしも、ウズメお姉ちゃんに、教える……!」
「年ちゃん、元に戻れるのかな……」
吉祥天様、阿多福様はそれぞれ他の神々にこの状況を伝えるべく一旦この場を去る。
「そう、これを見ていただけませんか?」
国御柱神様が懐にしまっていたタマゴの殻を取り出す。
「あ!それ、俺の殻だろ!なんで国御柱神が持ってんだ?」
「先ほどあちらで拾ったのですよ」
国御柱神様は拾った場所を指さす。
「何であんな所に落ちてたんだ?」
「原因はわからないんだけどな。これはお前が持ってたほうがいいだろ」
タマゴの殻は年神の手に渡されると、一層きらりと輝いて見えた。