百神~ヒャクカミ~データwiki

眠る老婆と乾く清水 ストーリー のバックアップ(No.1)


アイヌの里1.jpg

※○○にはユーザー名が入ります。

ある昼下がりのカムイの御山。
アイヌ地域にそびえたつこの山には清らかな清流が流れており、
カムイの御山に暮らす者たちには欠かせない川だ。

「カワ、ついた!ミズくみ!」
「たくさんくんだら、アブないのです~。ゆっくり、はこびます~」
「ねぇねぇ、イチバンもてるの、ダレかな~?」
「きゃっきゃ!ミズくみ、ダイジ!ぷぅ。でも、たくさんはオモいよ~」

にぎやかに川へ水を汲みに来たのはコロボックル様達だ。
コロボックル様達はいつも元気で、水を汲みに来るだけでもはしゃいでいる。
彼らの務めはいつも遊びの延長なのかもしれない。
すると川に近づいたコロボックルが何かに気付く。

「ぽえ?」
「どうしたの~?」
「ぽえぽえ……カワ、ミズがスクない?」

その言葉を聞いて、残りのコロボックル様達も川に近寄っていく。
そしてその異変にそれぞれが気づき始めた。

「ミズ、へってるみたいです~」
「なんでだろ~?たくさん、へってる~!」
「ぷぅ、ワッカウシカムイさま、おひるね?」
「ワッカウシカムイさま、いつもおひるねしてます~」

川の水かさはコロボックル様が気づいたとおり、普段よりも確かに少なかった。
そこで、コロボックル様達は並んで、川の水面をぱしゃぱしゃと叩く。

「モーシモーシ……ワッカウシカムイさま~?」
「おミズがスクないです~」
「ねぇねぇ、ワッカウシカムイさま~!おひるね~?」
「ワッカウシカムイさま、おきておきて~」

それぞれが水の神であるワッカウシカムイ様に向けて、川に対して声を投げかけるも返事がない。

「ワッカウシカムイさま、ヘンジないよよよ……」
「いつもキヅいて、オカシくれるのに~」
「シンパイです~。アペフチカムイさまに、お知らせします~」
「ねぇねぇ、ワッカウシカムイさまのイエ、みにいこ~♪」
「ぷぅ、ボクもいく~。シンパイだね~、おひるねなら、アンシンする~」
「ぽえ……ペトルンカムイさまにも、おハナシしよう!」

水汲みのことなどすっかり忘れたコロボックル様らは、それぞれの目的地に向かって走り出した。


カムイの御山の異変のみならず、森の中でもある異変が起こっていた。

「おかしいわ。今の時期にしては森が乾いているの」
「わかるわぁ…肌に良くない空気になっているわよね。雨乞いも上手く行かないし」

この異変に気付いたのは、潤いについて敏感なシリコロカムイ様とホイヌサバカムイ様だ。
「木々が揺らす葉が、どこか乾いた音がするのは……水が足りないからでしょうね」
「シランパちゃんも気が付いているかしらね。なんだか変な様子ってこと」
「ええ、気が付いているのではないかしら。彼も樹木の神ですもの」

まだ決定的な物を確認していないとはいえ、明らかに異変であることがわかり、嫌な予感を感じる二人。

「ホイヌサバカムイは色々な神に会ってこの異変を伝えてもらえるかしら。私はこの辺りを調べてみるわ」
「あら…アタシが行くの?まぁこの状況だもの、仕方ないわね」

口ではそう言いつつも、見逃すことができない異変については、ホイヌサバカムイ様もまた少しばかり焦りを感じているようだった。
ホイヌサバカムイが過去に封印されていたときは、雨が降らず乾いた地になっていたこともあるから……かもしれない。


アイヌの深山や森とは一変して、異変に気付いている者はおらず、里は賑やかだ。
ナビィと○○も里でくつろぎつつ、アペフチカムイ様が振舞って下さる料理を心待ちにしていた。

「アペフチばぁちゃん!魚はこの辺に置いとくな!」
「ほほ!助かるよ。今日は魚料理をたんと作れるね!それもこんなに新鮮だ。何にしようか悩んじまうよ」

レプンカムイ様とアトゥイコロカムイ様が獲ってきてくださった新鮮な魚を使う予定だ。
チセコロカムイ様は新鮮な魚を前に目を丸くしながら、アペフチカムイ様のお手伝いをしている。
「アペフチばあさま、まだピチピチしてるべさ~!掴もうとしても、逃げられるべ~」
「そりゃね、掴む力が足りないんだよ。もっとがっちり!こう掴めばいいのさ」
「おお~。さすがばあさまだべ。おらもコツ、掴めばできるかな~」

魚と格闘するチセコロカムイ様の横で、アトゥイコロカムイ様が何かに気付く。

「ん?」
「ねぇちゃん、どうした?」
「いや、さっきそこの茂みが揺れたような」

レプンカムイ様がアトゥイコロカムイ様の示す茂みに目を遣ると、確かに茂みが不自然に揺れている。
そして……。

「きゃぷっ……ついたです~!」

草をかき分け姿を現したのは、桃色の髪のコロボックル様だった。


コロボックル様の話を伺い、この場にいるメンバーも異変に気付く。

「確かに、火の勢いがやたらあると思ったんだ。コリャ乾燥しているね」
「おらは全然気が付かなかったよ~。コロボックルはすごいべ~」
「ワタシ、オドロキました。カワがちょっとヘンなのって、みたことないです~」
「小さいからこそ、気づけたことかもしれないね。偉いよ」
「そうなると、確かにワッカウシカムイに何かあったかもしれないねぇ」
「ばぁちゃん、オレも手伝うよ!魔神がでるかもしれないだろ」
「ほほ!助かるよ。腹ごしらえしたら出発するかね!」

アペフチカムイ様は出発する気満々のようだ。
用意のできた料理を振舞いつつ、新鮮な魚に下ごしらえをする。
魚料理は夕飯になりそうだ。

「レプンカムイがワッカウシカムイの様子を見に行くなら、あたしは海の様子を見に行ったほうがいいかな」
「あっ、確かに……ねぇちゃん、そこは頼む!」
「うん。ワッカウシカムイによろしくね」

アトゥイコロカムイ様は一足先に海へ向かった。
アイヌ地域全体に影響があったなら、海にも何か起きているかもしれない。
アペフチカムイ様は魚の下ごしらえを終え、やれやれとつぶやく。

「全く。ワッカシカムイの力を持って行ったのなら大したやつだよ。いっつも寝てるとはいえ、アタシと同じくらい力があるんだからね!」

アペフチカムイ様いわく、ワッカウシカムイ様はアペフチカムイ様とは対の存在。
双子のような、姉妹のような、切っても切れない関係にあるそうだ。

「ヨシッ!行くよ!このババについてきんしゃい!」

アペフチカムイ様は愛用の杖を手に取り、共に出発する神々を鼓舞した。