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挑め!恋の大鍛錬会 ストーリー のバックアップ差分(No.1)


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「まったく!どうしてあいつらは、こう焦れったいんだ!」

ある日、スサノオノミコトの社を訪れたあなたは、悲痛な叫びを耳にする。
日頃豪快な彼らしくもなく、文字通り頭を抱えているスサノオだが、
こうした様相は彼の愛娘・スセリヒメに起因することと相場が決まっていた。

あなたの来訪に気づいたスサノオは、案の定、簡単な挨拶に次いで相談を持ちかける。

「どうにも困っていてな…。ああ、うちの娘とオオクニヌシのことだ。
 お節介だとわかってはいるんだが、焦れったくて仕方ない。そうは思わないか?」

あなたは深々と頷き、同意を示す。

オオクニヌシは快活で誠意あふれる気持ちの良い若者だし、スセリヒメも優しく芯の強い女性だ。
剣術好きという共通項もあり、ともに鍛錬している姿はお似合いと評判高いが、そこまでである。
いかにも思慕を抱いた彼女に対し、オオクニヌシの場合は持ち前の誠実さがどうにも空回り、
当のスセリヒメにすら長期戦を覚悟させる体たらくだった。

お互い憎からず思っているはずの二神だが、彼らの仲がこうも遅々として進まないのは、
あなたや他の神々にとっても大変焦れったい事態だ。
スサノオとしては特に、最愛のスセリヒメを応援したいところだろう。

「何か方法はないものか…」

いよいよ困窮するスサノオへ、あなたはオモヒカネよろしく、ふと思いついた一案を授ける。

曰く、「吊り橋効果」と…。


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「さあ、皆々様!本日はまたとない鍛錬の機会でござります!張り切って参りましょう!」
「そうね。お父様のお節介には困ったものだけれど、ここで鍛えておけば、きっと実戦でも活かせるわ」
「さすがはスセリヒメ殿でござりまするな!その意気でござりまする!
 ○○殿、スクナビコナ殿!お二人も、ともに成長を目指しましょうぞ!」
「…何で僕まで?場違いだよね?」

日頃の「試練」に代わり「大鍛錬会」の額も華やかな作戦当日。
あなたの面前には、三者三様の態度が繰り広げられている。

オオクニヌシは早くも気合い充分に素振りを繰り返し、あふれた熱気が広い試練場を満たすようだ。
スセリヒメは上辺こそ実用的な評価を下すが、内心ではきっと、父の意図を汲み決意を新たにしているはずである。
そしてスクナビコナもまた、此度の思惑を敏感に悟ったうえで、抗議の声を上げている。

「こういう事は普通、若い二人で楽しむものだよ?僕ら、お邪魔虫じゃない?」

彼の目は、あなたへ向けて口ほどにそう語っていた。

とは言え、あなたにも言い分がある。
蛇足だろうとは思いつつ、あなたはそっとスクナビコナを物陰へ誘い、顛末を語った。

即ち、世の中には「吊り橋効果」と呼ばれる心理現象があり、時として男女の仲を後押しする際に用いられること。
この「大鍛錬会」も、「吊り橋効果」によるオオクニヌシとスセリヒメの急接近を狙ったものであること。
発案したあなたはスサノオによって見届役に任じられたが、相手は筋金入りの朴念仁ことオオクニヌシ、事態はどう転ぶかわからない。
そこで、ぜひ協力者が欲しいこと。

その協力者の人選において、あなたは日本地域の神々に熱心に声をかけたが、
どれほど有能な神も、オオクニヌシの天然ぶりをかいくぐって二人を縁づける自信を持ち得なかったのだろう。
皆が何かと理由をつけて仲人役を忌避した末、スクナビコナに白羽の矢が立ったことは、賢明にも黙っておくこととした。

ちなみにこのとき、唯一コトシロヌシだけは、ギリシャのクピドを気取って恋の弓取りを務めたがったが、
タケミナカタに「お前の腕でか?」と一刀両断され、泣く泣く諦めたという挿話がある。

ともかく、オオクニヌシの昔馴染みであり、知恵の回るスクナビコナであれば、協力者として願ってもない。
あなたはいっそ大仰な仕草で手を合わせ、改めてスクナビコナへ助力を依頼する。

「…まあいいよ。ちょっと面白そうだもの。その代わり、手抜きは許さないからね!」

スクナビコナはやれやれといった風情で嘆息するが、この問題に関しては決して否とは言わない。
あなたは友人想いの小さな神の協力を得たことを、大変心強く思うのだった。


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「…であるからして、今日は存分に己を磨くように!」
「はい!」

独創性に欠けたスサノオの式辞と、それに対するオオクニヌシの返答を合図に、「大鍛錬会」の幕が切って落とされた。
ルールは簡単だ。
この試練場を出発点として、並み居る敵を打ち倒しつつ、日本エリアの各地を巡って自己研鑽に努めることとなる。

「やあっ!」
「せいっ!」

モンスターを真似て作られたスサノオの傀儡を相手どって、オオクニヌシとスセリヒメは早くも愛刀を振るっている。
白刃がきらめく度、しゃぼん玉を割るように傀儡が霧散していく様は、見ていて気持ちがいいほどだ。
あなたも得意の武器を構え、二人に続かんと一歩を踏み出す。

「うわっ!」

背後の声は、スクナビコナのものだ。
身体の小さな彼は、どうしても肉弾戦が不得手となる。
常日頃「僕は武神じゃないんだから、オオクニヌシみたいにはいかないよ!」と言っている通り、
傀儡に追い回されながら、稀に神力を投げつけ、反撃を試みるのが精一杯のようだ。

「大事ござりませぬか、スクナビコナ殿!」

すかさず救援に駆けつけたオオクニヌシが、友人を背に庇って言う。

「このモンスターはスサノオ殿の神力でござりますゆえ、攻撃にも悪意はござりませぬ。
 ですが、スクナビコナ殿。貴殿が冒険で危険な思いをせぬためにも、まずは防御から身につけましょう。
 なに、ご心配には及びませぬ。それがしが手取り足取りご指導差し上げますから、身を任せてくださりませ」
「そ、そりゃどうも…」

鍛錬においては、すっかり指導者めいたオオクニヌシである。
スクナビコナは旧友の常ならぬ頼もしさに戸惑っている風だが、スセリヒメの方でも、思うところがあるらしい。

「…その言葉、私に言ってくれればいいのに」

それは辛うじて声になった程度の小声ながら、すぐ側にいたあなたの耳に、剣戟の隙間を縫って届いた乙女心だった。