百神~ヒャクカミ~データwiki

暗躍のハロウィン戯曲 ストーリー の変更点


※○○にはユーザー名が入ります。

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「力が戻るっていうのは本当にいいものね」
「そうですねエレシュ姉さま。この後パーティでもいかがですか?何か用意しますよ」
「パーティ!アタチ甘い物が欲しい!チミも甘い物欲しいよね!?」

超魔神の討伐を終え
力を取り戻したバビロニアの冥界の神々と談笑をしていたあなた。

「それにしてもあいつらは何でオレ達を封印するんだろうな?」
先ほどまで封印されていたタンムーズが口を開く。

倒しても復活する魔神や超魔神の素性。そして次々に神を封印する理由。
長く旅をしてきたが一向にその理由がわからない。
目の前の敵を倒すだけでなく諸悪の根源を見つけ出さなければ
この世界で安心して生活できる時はこないかもしれない。

「た!大変です~!」

冥界の入り口から聞き覚えのある声が響く。
ナビィがまた封印された神様の情報を知らせにきたのだろうか。

「砂が神様達を … あっ!○○様!!」

ナビィがあなたの名前を叫んだ時、
突如現れた空間から大量の青白い砂にあなたは包まれていた。

「歪みの世界にあった砂か!こんな物私の…」「エレシュ姉さま!近づいたら危な…」

神様達の声が遠くなり辺りは暗闇に包まれていった―――


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城の扉を開けた先は、豪華絢爛な大広間へと続いていた。

『それでは神様、よきハロウィンパーティーを』
ファルとサイリスはそう言い残し、
瞬く間に砂へと姿を変え消えしてしまっていたが、
まだ気配は消えていない。

「また逃げられちゃったわぁ~!どこにいったのよ!」
地団駄を踏み悔しがるワイナミョイネン様をモンチュ様が宥めている。

「ミョイネンったら、せっかくのメイクが崩れちゃってるわよ!」
「イヤァ?!嘘っ!直してくるわぁ~!」

窓の外は、先に通された会場と同じように靄がかっている。
カボチャランタンの光も繁る森の姿もここからは見えはしない。

広間を見渡していると、ふいに背後の扉が閉まる音がした。

「!?なんで勝手に!?開かなくなっちゃったんだけど!」
「…なるほど、俺達はまた閉じ込められてしまったようだな」
「はっはっは!これは参った、びくともせんな!」

スカジ様とニョルズ様、タケミカヅチ様の力を合わせても
扉を動かすことはできないようだ。

「閉じ込められたって…どうするんスか?」
「そんなのどうにかして出る方法探すしかないでしょ!」

ハヌマーン様は困惑している。
イシュチェル様の語調からも焦りが感じられた。
元の世界、イツァムナー様と離れてどのくらいなのだろうか。

バビロニア冥界の神様たちにも連絡をつけられていない。
突然砂に巻き込まれたため心配させてしまっていることだろう。
もう日も跨いだ頃合いだ。
ハロウィンパーティーが終われば元の世界に戻れるだろうか。

「ふん、その際に奴らが俺達を帰す気があればの話だがな」
「……クス、パーティーとはよくいう……」
「か、帰れなかったら…頼まれてる、もの…創れなく…なっちゃい、ます…」

神様たちは薄々、いやはっきりと勘付いているようだ。
ファルとサイリスがこの空間から自分たちを逃すつもりがないことに。


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「あっ!何かきたんだぞ!見て見て!」
「なんだ!?何か動いてくるみたいだな!」

ヌプリコロカムイ様が跳ねる。マナナン・マクリル様も声をあげ指で示してくれた。
見ると、広間の奥から白いテーブルクロスの敷かれた長机が流れてきている。

『パーティーを楽しむ皆様へ、私共よりささやかですがご用意させていただきました』

どこからともなくファルの声が響く。
アトロポス様が警戒するようにラケシス様とクロートー様の前に出て静かに辺りを見渡すが、
気配の出処はいまいち掴めないようだ。

「…また、窓の外一面から覗いてるのかもしれないな」
「ラケちゃん、何か見えたりしない?」

クロートー様が問かけると、ラケシス様は頷いて
ケイロン様の背によじ登る。

「あれは…机にたくさんお料理が乗ってるのよ!」
「ハロウィンにちなんだお菓子も多いようだな」
「おかし!わーい!オグマ、おかしがたくさんきたぜ!」

皿に盛りつけられたお菓子に、
幼いクーフーリン様が手を伸ばすよりも早くスカサハ様が制止の声をあげる。

「待ちな!奴らからの施し…何が入っているかわからないだろ!」
「クス……変わらず、用心深いことだな…」
「アンタみたいなのを見ていると染み付いちまってね」
「………ほう……?面白い……」

幼いクーフーリン様が手を止めた隙に、スヴェイ=クレプシードがお菓子を口に運ぶ。

『んー…?ジャリってシタヨー!』
『スヴェイ、ぺってしろ、ぺって。…おいアンタら、これ食べなくて正解だぜ』

ヘレグ=クレプシードが手近なお菓子を弄ぶと、ぼろりと崩れ砂と化した。

『時ノ砂が混じってんだわ、おーこわ。ハハッ、大体の意図が読めてきたぜ』
「…どういうつもりかな?」
「時ノ砂…!それを食べると何か起きるんですか!?」

プロメテウス様が不敵に笑う。
そのそばで、ナビィも不安げにヘレグに質問を飛ばした。

『そこのスポンジはともかく、アンタわかってて言ってんじゃねーの?これは』
『ヘレグ、貴様また邪魔を!』

答えようとしたヘレグを突如現れた砂が包み込んだ。
サイリスの声だ。


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「あっ、おい!お前…!」
「…!だめ…!」
「飛び出したら危険だ、クーフーリン!俺達では時ノ砂を操れないだろ」

砂に飛び込もうとしたクーフーリン様を、モリガン様が必死で引き留める。
オグマ様も攻撃的な砂の出現に警戒を強め、ブリギッド様を庇うような体勢をとった。

「オグマお兄ちゃん…あれ、サイリスかな」
「だろうな。何のつもりかは知らないが、やはりこのパーティーとやら、長居するものではなさそうだ」
『へれぐー!』

スヴェイが砂の中心にいるであろうヘレグに向かって呼びかける。神様たちも、事の動向を見守っている様子だ。
暫くすると砂の塊の中心から、長い棒状のものが突き出てきた。

『…っは、そーそー。力のない奴は大人しく見ていたほうが安全だぜってな!』
『…ぐ、ヘレグ、貴様…っ』

ヘレグが武器を振るうと砂は収束し少年……サイリスの姿へと戻っていく。
もはや仮面をつけることも放棄したサイリスは、ふらつきながらも笑い声を漏らした。

『…アハハ!アハハハハ!貴様は時ノ砂を口にしたところで、誰に忘れられもしないだろうさ!だってもう』
『サイリス!』

サイリスのものとは別の砂が広間へと流れ込み、ファルの姿を形作る。
弟の口を塞ぐように現れたが……今、サイリスはなんと言っただろうか。

「忘れられる…?」

思うところは同じだったのだろう。
オイフェ様が眉根を寄せながら呟いた。

「忘れられるってどういうことかしら?」
『オイフェ様、どうぞお気になさらず。パーティーをお楽しみくださいませ』
「これで楽しめるとでも思ってるの?」
『はい、勿論です』

詰め寄るオイフェ様に対し、ファルは淡々と返すのみだ。

『元の世界のしがらみや責務、日頃神様方を悩ませる物事はここには一切御座いません』
「その時ノ砂ってのが入った料理は一体なんだ?」

ゲレグ様も目を細めて問いただす。

『時ノ砂…私共、そしてヘレグやスヴェイにとっては欠かせないほどに、とても様々な力を秘めた欠片のようなものです。何の欠片かは…忘れてしまいました』

ファルは口元に手を当て、笑うような動作をする。
冗談なのか本気なのか、その顔色からうかがい知ることはできない。

『神様方には日頃の疲れや諍いのことは忘れ、お寛ぎいただきたく思います』
「それは、逆も言えるのかい?私達のことを、元の世界の奴らが忘れることだってあると」

プロメテウス様の鋭い視線にも怯むことなく、ファルは答えた。



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『人間の、そして親しい神様の念が届かないここでなら、神様方もご自身本来の姿へと戻れましょう』
「それは…それは困るよ!忘れられたら、あたしたちの存在ってどうなっちゃうの!?」

扉を開けようと奮闘していたはずのスカジ様が、声を張り上げる。
気づくとニョルズ様とタケミカヅチ様、ゲレグ様が扉へ向かっていた。

「なんとしてもここから出なければなるまい!」
「タケミカヅチ、引くのか押すのかどちらかにしてくれ」
「モンチュにこのまま付き合うのは勘弁だしな」

扉のそばに立っていたパンドラ様が俯いている。
スカジ様の発言で一層不安が濃くなったようだ。 
無理もないだろう。パンドラ様と関係の深い神様は、ほとんどがこの空間に呼ばれているのだ。

「忘れられたら…死んじゃうの、かな…」
「ぱ、パンドラのことは僕が絶対忘れないよ!」
「エピくん…」

パンドラ様を元気づけようとするエピメテウス様も、微かに手が震えている。
他の神様たちにも動揺が走っているのが見て取れた。

「俺は顔が広い方だと思うけど、そうでなくたって、そんなにすぐ忘れられちまうもんか?」
「ミディール、あなたのことはどうなろうと忘れられないから安心しなさい」
「エーディン…」
「あなたもあたしのこと忘れるはずがないでしょうけど」

リル様は頭を掻いて笑い飛ばそうとするがぎこちなさが目立つ。
エーディン様も気丈に振る舞ってはいるが、ミディール様の首輪を撫でている。
…心細さはどの神様も変わらないようだ。
人々の信仰の上に成り立つ神様にとって、忘れられることは何より恐ろしいことらしい。

「困りましたね、ティアマトに忘れられたらと思うと少し怖いです」
「やーん!タコちゃんの事忘れたカナロアくんなんて見たくないよー!」
「あー…つまりよぉ、オメーらオレたちを潰したいってことでいいんだな?アイツらが俺のことを忘れるこたぁねーと思うが」
「だよな、兄貴!でもはやく戻ってやんねーとクウラなんか萎びちまうよ!」

アプス様は思案顔で、ハウメア様にも同意するように頷く。
クー様とマウイ様、そして他の神様たちは各々武器を取り、ファルとサイリスに向き直った。

『あら…?皆様また武器などお持ちになられて…どうなされました?』
「あなた達を倒して元の世界に戻してもらうんです!神様を忘れさせたりなんて、絶対させません~!」
「争っていては何も解決しない。どうにか、私でよければ交渉してみたいと思うが…聞いてもらえそうにないだろうか」

首を傾げるファルに対し、ナビィですら憤慨している。麒麟様も途方に暮れている様子だ。
ちょうどそこへワイナミョイネン様とモンチュ様が戻ってきた。

「お色直しもバッチリよぉ?!さっ仮面野郎はどこに……いるじゃないの!!」
「ミョイネン、慌てて走ったらまたこけちゃうわよ?」

ワイナミョイネン様が、ファルとサイリスの姿を見るやいなや駆け寄っていく。
勢いに気圧されたのか、サイリスがたじろぎ後退した。

『ファルお姉さま、このままではあの方への報告も難しくなってしまいます』
『それもそうですね…残念ですわ、神様方のために用意したこの最高の場所も、お気に召していただけないなんて…』
「ちょっと!聞いてるの!?さてはこのミョイネンちゃんにびびって逃げるつもりね!?そうはさせないわ!逃さないんだか…オゥワァァーッ!」
「ミョイネン!見事なこけっぷりね~!」

長机にぶつかり机ごと倒れこむワイナミョイネン様をモンチュ様が引き上げる。
ワイナミョイネン様は足を捻ってしまったそうだが、すぐに飛び起きて机に蹴りをいれている。無事なようだ。

「愛が忘れられちまうってのは悲しいぜぇ!オレも戦うのは得意なほうだからな!カカオの神からちょっとばかし戦の神に出戻るか!誰かあの砂への対処法を教えてくれるか!?」
「あっ、それなら私がお手伝いできるかもしれません」
「あの砂については、私も記録をつけていますので、お役に立てるかと」
「ちょっと、アンタ愛バカのくせに何言ってんのよ!?」

エクチュア様の発言にイシュチェル様が驚いているが、本人は気にかけていない様子で、ネムティ様とトト様とともに作戦を練り始めた。

やがて砂に開放されてから口数の少なかったヘレグがファルに問いかける。

『…つまりアンタらは、神サマを呼び出したつもりだったわけだな』
『勿論です。そうでなければ…そもそも貴方たちのような出来損ないに顔を合わせる用などありません』
『つまりつまり、だ。俺やスヴェイは、少なからず神の力が宿っていたわけだよな?ハハッ!これは…これはいーい情報をありがとよ!』
『スヴェイ、カミサマー?』

ヘレグが満面の笑みを浮かべる。彼の滲みでる喜色に疑問は募るばかりだ。
彼ら、クレプシード家は一体何者なのだろうか……。


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急に禍々しい気配を目前に感じ顔を向けると、至近距離にサイリスがいた。
窪んだ肌からは生気が感じられない。受け身の体勢をとるタイミングを完全に見失った。

『お前が例の人間ですか』
「!○○様!」
「メジェド!」

ナビィの悲鳴と同時に、サイリスと自分との間に鋭い光線が走る。
あまりの眩しさに思わず目を瞑ってしまったが、メジェド様から発せられたものだろう。

「奴は油断も隙もないな。安心しろ、加減はした」
「加減したの自分っすけど。いやおたくに当たらないように調整したんでちょっと弱めってだけっすわ」
「うふふ、さすがメジェドね。威力抜群でしてよ」

オシリス様がサイリスを見遣る。
つられて目を向けると、砂となったサイリスが元の姿に戻りつつあるところだった。
メジェド様の一閃を砂となることでかわしたのだろう。

「やっぱ砂系は自分のレーザーでも微妙っすね。効果はなくはないっぽいっすけど」
「あら、十分ではなくて?机もお菓子も吹き飛んでなくなってしまいましたわ」

イシス様の言うとおり、先ほどまで机が並んでいたはずの箇所は微かに煙が昇るだけだ。
よくよく見れば、広間の壁も微かに削れているような気がしないでもない。

「メジェド、この調子でいけ。奴らだけを狙えば十分だろう」
「え?調子って…マジすか。わりとこれ体力使うんすけど、あ、はい大丈夫っすやりますって」

少し離れた場所で口を開けて様子を見ているヌプリコロカムイ様が見えた。
ヘパイストス様の炎と同様に魅入ったのだろう。

『…………人間ですか?あれは…ただの人間がこの場に来れるはずがない』
『神様方との交友でこの者ももしかしたら…』
『神か、魔神か、はたまたそのどれでもないのかもしれません』

ファルとサイリスが相談するように顔を合わせている。
まさか自分のことをさしているのだろうか。
神や魔神のような力は持ちえていない自分の、何を勘繰ることがあろうか。

「………クス、そこに…踏み込むか…。知らないほうがよいことも……いや、お前に委ねよう……」

メイヴ様が静かにこちらを眺めている。
一体メイヴ様は何を知っているというのか。……尋ねても答えを教えてはくれないだろう。

『予定外ではありますが、報告すべきことが増えました。これは一度まとめる必要がありそうです』
『そうですね、お姉さま。ここは一旦引きましょう』
「!またこのパターンか」

ファルとサイリスはそれぞれ砂となり、窓の外へと流れ出て行く。
武器で仕留めようにも砂に当てるのは至難の業だ。
気付いたスカサハ様やスカジ様が歯噛みしている。
スカジ様に至っては、出て行く砂に向けて矢を放っている。
スカサハ様が苦虫を噛み潰したような顔で口を開いた。

「しかし、はっきりしたね。奴らはパーティーを終わらせないつもりだろう」
「なにっ!?トリフネに連絡をとって迎えを頼むとしよう!」
「どうやって連絡とるっていうのよ!…げっ!こっちの窓からフェイルシュート戻って来ちゃった!ごめん!」
「…あ、…俺の作った橋と、同じ…です」
「さっきの会場と似たようなモンなら、やっぱり仮面のアイツらなんとかしたら外に出れるんじゃねーのか?」
「アグニの言う通りだろうな。もとより、それ以外の解決策が今のところ思い浮かばない」

そう言うと、フッキ様は広間の奥へと進んで行く。
少しついていくと、進むほどにファルとサイリスの砂に包まれるような感覚を覚え、思わず足が止まる。

「フッキ、どこにいくつもりだ?」
「ファルとサイリスを探しにいく。アグニも、手合せだと思えば悪くないだろう?」
「!奥に行くほどあの子たちの気配が濃くなっていくよ!アタシも行く!…モンチュも来るよね?」
「もっちろんよ!可愛い子猫ちゃんたちに荒事任せてられないわ!」

ハトホル様も奥へと進みかけ、不安げにモンチュ様を振り返る。
モンチュ様は自らの胸元を叩き、実に頼もしい。

「んもう!砂まみれの料理なんてナンセンスにも程があるわ!早く帰ってカレピ食べたい~!さっさと行きましょ!」

ワイナミョイネン様に強い力で背を押され、禍々しい空気の中、自らも意を決して広間の奥へと足を踏み出した。