アーシラトと沈みゆく砂漠 ストーリー のバックアップ(No.1)
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- 1 (2017-04-21 (金) 15:08:33)
※○○にはユーザー名が入ります。
天に高くそびえるバビロニアの魔塔。
○○とバビロニアの神様たちはその見事な景色を眺めていた。
「バビロニアの魔塔は本当に高いですね~!ここでもこんなに地面が離れているのに、まだ上に登れるんですね」
ナビィは空を飛ぶことはできるが、この高さまで飛ぶのはさすがに怖いとつぶやく。
「そうだねぇ。もっと高い所にはアヌ様が使っている部屋なんかもあるんだ」
「そこまで自分の足で登ろうって思う神様はいないと思うけどね」
イシュタル様、ティアマト様もそれぞれ魔塔の外の景色を眺めている。
白い雲がふわふわと近くを漂うほどの高さのある一室から外を眺めると地面が遥か下に見える。
一歩でも足を踏み外したら……と考えればぞっとするが、青い空と青い海が境界なく交じり合うさまは、まさしく絶景だ。
「あの海にはヤム様が住んでいるんですよね!」
「そうそう、ヤムとレヴィアタンはあの海からここまでやってくるんだよ」
何もかもが小さく見えるこの場所ですら、青々とした海の広大さが伝わってくる。
海の神とは、この広大な領域を統べる力を持った偉大な神なのだと改めて実感した。
しかし、ここでティアマト様が何かに気が付く。
「あら…?何だか様子が変じゃない?」
「えっ?どうかしましたか~?」
「ほら、なんだか…海が拡がってきているような」
実はティアマト様が異変に気付くその何時間か前に、すでに異変に気付いて行動を起こしていた神がいた。
バビロニア地域の天界と海沿いをよく行き来し、のんびりと生活をしていた神・アーシラト様とダゴン様である。
加えて、その時同じ場にいたヤム様、ヤム様がいつも連れている竜であるレヴィアタンも同じく異変に気が付いていた。
「なんだか、今日は海が騒々しいね」
ダゴン様は穏やかに海を観察する。何かが普段と違う。
「魔神でも現れたのでしょうか?でも、もっとおかしな気配を感じるような」
レヴィアタンも海を眺め、背びれを揺らして辺りを観察している様子だ。
しかし、この場の神々はまだ情報が少ないこともあり、何が違和感を感じさせるかまでは気づくことはできないでいるようだ。
「魔神の仕業なら怖いわ……。まだ何が起きているかわからないもの」
「そうだね。……」
ダゴン様はふむ、と何か考えるように顎に手を添える。
「やっぱり、知ることって大事じゃないかな。僕少し様子を見に行ってみるよ」
そういうなり、ダゴン様はすっと立ち上がり、迷いなく海へと向かっていく。
「それなら、僕はほかの神たちに応援を呼んできます。きっとギルガメッシュやバアルなら魔塔にいるかと思いますしね」
同じく、ヤム様もその場を離れるべく、魔塔のある方角へ体を向ける。レヴィアタンもまた、ヤムに付き添うつもりなのか同じ方向を向く。
「ふ、二人ともここを離れてしまうの? 危ないわ……!私はここでもう少し、様子を見ていたほうが……」
「それなら、アーシラトはそこで待っていて。すぐに戻るから」
「はい。僕とレヴィアタンも応援を呼び次第すぐに戻ります」
ダゴン様もヤム様、レヴィアタンもその場を去り、ただ一人取り残されたのはアーシラト様。
「……本当に、すぐに戻ってきてくれるのかしら」
アーシラト様は不安そうな面持ちのまま、二人の行く先を見守った。
ダゴン様、ヤム様が動き始めた辺りで、アヌ様やエンキ様、アプス様、そしてバアル様もそれぞれ動き始めていた。
「バビロニアの海で、多少なりとも空間のゆがみを感じてね。近くにいたダゴンやアーシラト、ヤムが気づいたみたいだ」
「空間のゆがみ、ですか?」
「そう、バビロニアの海で直接何かがあったわけではないみたいだけど……」
「間接的にバビロニアの海に影響を与えているということか」
その何かが何であるのかはまだアヌ様の管轄している領域に現れていないのか、アヌ様も把握できていないようだ。
「ふーん……アプス、どうしようか。たぶん魔塔にはちょうど○○も来ているし、伝えておいてもいいかもね」
「はい、それが良いかと。私も同行しますよ」
「俺はヤムと合流しよう。海の様子も気になるからな」
「わかりました、バアルも気を付けて」
そして、この場に残ったのはアヌ様一人。あちこちの様子を天空から見ながら、つぶさに観察し――あることに気が付くのであった。
「くすん……二人とも、すぐに戻ってくるって……戻ってくるって言ったのに……」
異変が起きつつあり、不穏な気配の中、いつ魔神が現れてもおかしくないこの状況で一人残ることを選んだとはいえ、アーシラト様は不安にさいなまれていた。
辺りを見回してもダゴン様とヤム様、レヴィアタンが戻ってくる気配もなく、ただ静かに波が打ち寄せては返っていくばかりで、一層寂しさと不安感を煽る。
「皆、大丈夫なのかしら……私もどちらかについていくべきだった……? でも、もう遅いわ……」
すでに海は広がり、先ほどまで砂浜であった場所まで海水が広がっていた。
ふらふらと同じ辺りを行ったり来たりしつつ辺りを見回すアーシラト様だったが、遠方に何かを発見する。
「……! 小さい子供だわ」
アーシラト様は、倒れている子供を発見しすぐさま駆け寄り、倒れている子供を抱きかかえる。
「大丈夫? ……ぼろぼろだわ。どうしてこんなに……」
「ウーン……」
「大丈夫よ。私が守ってあげるから……」
しかし、アーシラト様がそっと抱きかかえるその子は、間違いなくクレプシード家の一人であるスヴェイであった。