夏だ!海だ!特訓だ! ストーリー のバックアップ(No.1)
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- 1 (2016-08-18 (木) 14:14:15)
※○○にはユーザー名が入ります。
「はぁ……ポーエレ……何処に行ってしまったんだ……」
ここは常夏の南の島。
全ての生き物が生命に満ち溢れている。
太陽の光が降り注ぎ、植物ですらも生き生きとしている……筈だが、どうやらこの男は違うらしい。
「ポーエレ……もう暫く会っていない……心配だ。一体何処に…?」
○○はナビィと共に、長旅の気晴らしに南の島へ来ていた。
しかし、目の前をこうも陰気な男がうろついていては気が休まらない。
同じ所を行ったり来たり。そして時たまちらりと○○へ視線を向けてくる。
「ええと…クムリポ様。一体どうしたんですか?」
「ナビィ、聞いてほしいんだ。ここ暫くの間、ポーエレを見ていない」
「ポーエレ様ですか?」
「もしかしたら魔神に連れ去られたかもしれない…ああ、どうしよう」
狼狽えた視線を彷徨わせるクムリポ様。
それを聞くとナビィも心配した様子で眉尻を下げる。
「そ、それは大変です!ポーエレ様を最後に見たのはいつですか?」
「ええと…確か、15分前……いや、16分24秒前だったか…」
「……え?」
「もう16分29秒もポーエレを見ていないなんて、気が狂いそうだよ」
「ええと…」
ナビィは困惑して口元に手を当て言葉を探す。
○○は、ナビィに助け船を出すべく、一緒に探そうかとクムリポ様に提案した。
「君が…一緒に探してくれるのかい?それは心強い」
「○○様、せっかくのバカンスだったのに良いんですか!」
「ああ、休暇中だったの?それは悪いなぁ…でも、君も思うだろう?」
クムリポ様は大袈裟な素振りで額に指先を当て、天を仰ぐ。
「君の休暇なんかより…美しき女神ポーエレを探すことの方が大切だ、って」
ポーエレ様に酔狂している彼に太陽の光を燦々と降り注ぎ、まるでスポットライトが当たっているようだ。
やけに自信満々に言われてしまうと、そんな気もしてくる。
「ポーエレ様も大切ですけど、○○様のバカンスも大切ですよ~!」
羽を揺らして熱弁するナビィを宥めて、○○はクムリポ様と行動を共にする事にした。
まずはポーエレ様が何処に居るかを知っていそうな人物を探すのが近道だろう。
「ポーエレの事を知っている人物か…。この南の島でポーエレの事を一番知っているのは僕だけど…」
クムリポ様は少し考えてから、はたと何か思いついたようだった。
「そうだ、あの人達ならきっと……」
心当たりがあるというクムリポ様に付いて砂浜を歩いていく。
すると段々と賑やかな声が聞こえてくる。
「一体これは何の騒ぎでしょう…?」
魔神が出たという訳でもなく、どことなく浮かれて楽しげな騒ぎのようだ。
あらゆる地方の神たちが集まって、談笑をしていた。
クムリポ様は辺りの雰囲気を一切気にせず、神々をかき分けずんずんと歩みを進める。
「……やっぱり、ハウメア」
「クムリポくんも来てくれたの!?やーん!嬉しい!」
神々の輪の中心に居たのはハウメア様。
人懐っこい満面の笑顔で、クムリポ様の手を両手で握って元気よく揺らす。
「実はね、ここ南の島で特訓をしましょーってお話があってね!」
「色んな地域から、様々な神様たちが来てくれているんだ」
道案内を終えたカナロア様が丁度帰ってきた。
クムリポ様の後ろに立つ○○の姿に気付くと、カナロア様は小さく微笑みかける。
「○○も、南の島へようこそ」
「そうだね!○○もようこそ!」
「ハウメア…相変わらず元気だね」
「元気だよ!さっきまで特訓の案内とか、オススメ特訓スポットとかを紹介してたのー!」
「へえ、…まあ、僕は興味が無いけど」
明るい笑顔のハウメア様、包容力のある微笑みを携えたカナロア様。
そして、南の島での特訓に興味の無さそうなクムリポ様。
○○はそんな三人を眺めて、話を聞いていた。
……暫くして、クムリポ様は本題を切り出した。
「ねえ、ここにポーエレは来ている?」
ハウメア様は目をぱちくりした後、振り返りカネ様に声を掛ける。
「カネちゃん!ポーエレちゃんの事、どこかで見かけた?」
「ポーエレ?みてないよ!」
「ありがとう!…カネちゃんが見てないなら、来ていないかも」
「そうか…」
「何かあったの?」
クムリポ様は、事の一部始終をハウメア様に伝える。
「僕の勘が告げているんだ…ポーエレが危ない目に合っている気がする」
「うーん…確かにクムリポくんがポーエレちゃんを見失うって、ちょっと珍しいねー」
「何か事件だろうか…」
ハウメア様とクムリポ様とカナロア様は共に、両腕を組みうーんと首を捻る。
と…、その時カナロア様が、海からの来訪の気配を感じて顔を上げる。
「カモホアリイ!お帰り」
「……ただいま」
ざぷんと海辺から現れたのはカモホアリイ様。
カモホアリイ様は頭を振って髪についた海水を飛ばす。
その愛らしい様子を眺めていた○○は、カモホアリイ様と目が合う。
カモホアリイ様は○○を見つめながら、口を開いた。
「……ポーエレ、森の方で……魔神に攫われてた」
一同はざわつき、場に動揺が走った。
「まあ…!皆で助けに行かないと!」
「そうだな、よし…出掛ける準備をしよう」
「これも、立派な特訓の一環!カモホアリイちゃん!案内をよろしくねー!」
どことなくハウメア様はわくわくした様子で他の南の島の神々に声を駆け回る。
ポーエレ様が強い神で心配が薄いからだろうか…。
危機感は微かに薄れており「特訓」という単語に皆明るい調子で沸き立った。
…ただ一人、静かに本気の闘志を燃やすクムリポ様を除いては。
「みんなーっ!しゅぎょーに、しゅっぱつなの!」
カネが笑顔で元気よく森を指差した。 ○○とナビィも、ハウメア様やカナロア様、南の島の神々たちと共に早速森へ向かうのであった。