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夏だ!海だ!特訓だ! ストーリー

Last-modified: 2018-07-21 (土) 19:24:22

南の島01.jpg

※○○にはユーザー名が入ります。

「はぁ……ポーエレ……何処に行ってしまったんだ……」

ここは常夏の南の島。
全ての生き物が生命に満ち溢れている。
太陽の光が降り注ぎ、植物ですらも生き生きとしている……筈だが、どうやらこの男は違うらしい。

「ポーエレ……もう暫く会っていない……心配だ。一体何処に…?」

○○はナビィと共に、長旅の気晴らしに南の島へ来ていた。
しかし、目の前をこうも陰気な男がうろついていては気が休まらない。
同じ所を行ったり来たり。そして時たまちらりと○○へ視線を向けてくる。

「ええと…クムリポ様。一体どうしたんですか?」
「ナビィ、聞いてほしいんだ。ここ暫くの間、ポーエレを見ていない」
「ポーエレ様ですか?」
「もしかしたら魔神に連れ去られたかもしれない…ああ、どうしよう」

狼狽えた視線を彷徨わせるクムリポ様。
それを聞くとナビィも心配した様子で眉尻を下げる。

「そ、それは大変です!ポーエレ様を最後に見たのはいつですか?」
「ええと…確か、15分前……いや、16分24秒前だったか…」
「……え?」
「もう16分29秒もポーエレを見ていないなんて、気が狂いそうだよ」
「ええと…」

ナビィは困惑して口元に手を当て言葉を探す。
○○は、ナビィに助け船を出すべく、一緒に探そうかとクムリポ様に提案した。

「君が…一緒に探してくれるのかい?それは心強い」
「○○様、せっかくのバカンスだったのに良いんですか!」
「ああ、休暇中だったの?それは悪いなぁ…でも、君も思うだろう?」

クムリポ様は大袈裟な素振りで額に指先を当て、天を仰ぐ。

「君の休暇なんかより…美しき女神ポーエレを探すことの方が大切だ、って」

ポーエレ様に酔狂している彼に太陽の光を燦々と降り注ぎ、まるでスポットライトが当たっているようだ。
やけに自信満々に言われてしまうと、そんな気もしてくる。

「ポーエレ様も大切ですけど、○○様のバカンスも大切ですよ~!」

羽を揺らして熱弁するナビィを宥めて、○○はクムリポ様と行動を共にする事にした。
まずはポーエレ様が何処に居るかを知っていそうな人物を探すのが近道だろう。

「ポーエレの事を知っている人物か…。この南の島でポーエレの事を一番知っているのは僕だけど…」

クムリポ様は少し考えてから、はたと何か思いついたようだった。

「そうだ、あの人達ならきっと……」


心当たりがあるというクムリポ様に付いて砂浜を歩いていく。
すると段々と賑やかな声が聞こえてくる。

「一体これは何の騒ぎでしょう…?」

魔神が出たという訳でもなく、どことなく浮かれて楽しげな騒ぎのようだ。
あらゆる地方の神たちが集まって、談笑をしていた。
クムリポ様は辺りの雰囲気を一切気にせず、神々をかき分けずんずんと歩みを進める。

「……やっぱり、ハウメア」
「クムリポくんも来てくれたの!?やーん!嬉しい!」

神々の輪の中心に居たのはハウメア様。
人懐っこい満面の笑顔で、クムリポ様の手を両手で握って元気よく揺らす。

「実はね、ここ南の島で特訓をしましょーってお話があってね!」
「色んな地域から、様々な神様たちが来てくれているんだ」

道案内を終えたカナロア様が丁度帰ってきた。
クムリポ様の後ろに立つ○○の姿に気付くと、カナロア様は小さく微笑みかける。

「○○も、南の島へようこそ」
「そうだね!○○もようこそ!」
「ハウメア…相変わらず元気だね」
「元気だよ!さっきまで特訓の案内とか、オススメ特訓スポットとかを紹介してたのー!」
「へえ、…まあ、僕は興味が無いけど」

明るい笑顔のハウメア様、包容力のある微笑みを携えたカナロア様。
そして、南の島での特訓に興味の無さそうなクムリポ様。
○○はそんな三人を眺めて、話を聞いていた。

……暫くして、クムリポ様は本題を切り出した。

「ねえ、ここにポーエレは来ている?」

ハウメア様は目をぱちくりした後、振り返りカネ様に声を掛ける。

「カネちゃん!ポーエレちゃんの事、どこかで見かけた?」
「ポーエレ?みてないよ!」
「ありがとう!…カネちゃんが見てないなら、来ていないかも」
「そうか…」
「何かあったの?」

クムリポ様は、事の一部始終をハウメア様に伝える。

「僕の勘が告げているんだ…ポーエレが危ない目に合っている気がする」
「うーん…確かにクムリポくんがポーエレちゃんを見失うって、ちょっと珍しいねー」
「何か事件だろうか…」

ハウメア様とクムリポ様とカナロア様は共に、両腕を組みうーんと首を捻る。

と…、その時カナロア様が、海からの来訪の気配を感じて顔を上げる。


「カモホアリイ!お帰り」
「……ただいま」

ざぷんと海辺から現れたのはカモホアリイ様。
カモホアリイ様は頭を振って髪についた海水を飛ばす。
その愛らしい様子を眺めていた○○は、カモホアリイ様と目が合う。

カモホアリイ様は○○を見つめながら、口を開いた。

「……ポーエレ、森の方で……魔神に攫われてた」

一同はざわつき、場に動揺が走った。

「まあ…!皆で助けに行かないと!」
「そうだな、よし…出掛ける準備をしよう」
「これも、立派な特訓の一環!カモホアリイちゃん!案内をよろしくねー!」

どことなくハウメア様はわくわくした様子で他の南の島の神々に声を駆け回る。
ポーエレ様が強い神で心配が薄いからだろうか…。
危機感は微かに薄れており「特訓」という単語に皆明るい調子で沸き立った。
…ただ一人、静かに本気の闘志を燃やすクムリポ様を除いては。

「みんなーっ!しゅぎょーに、しゅっぱつなの!」

カネが笑顔で元気よく森を指差した。 ○○とナビィも、ハウメア様やカナロア様、南の島の神々たちと共に早速森へ向かうのであった。


砂浜に現れた魔神を討伐した後、神々はそれぞれ自分の特訓に向かった。
ハウメア様とカナロア様は、一先ず他の神々を見送り砂浜に残る。
ナビィと○○も、二人の元に残っていた。

「色々とばたばたしててごめんね!特訓、楽しんでる?」
「ナビィは楽しんでます~!」
「ははっ。特訓なのに、楽しんでいる、というのもおかしな話だけど」

ハウメア様とナビィの発言を聞いて、カナロア様が朗らかに笑う。

「それもそうだね!でもでも、楽しいのがやっぱり一番だと思うなー」
「それには俺も同意だな。皆、心なしか生き生きしているよ」
「南の島の神様!って感じで、皆さんはっちゃけてますよね!」
「ふふ、ナビィちゃんも南の島っぽく、頭にハイビスカス付けちゃう?」
「きっと似合うな、それは。ナビィは愛らしいから」
「きゅ…急に褒められると照れちゃいます~…!」

ハウメア様の優しさとカナロア様の気さくさに、ナビィは溜まらずもじもじと視線を逸らした。
○○は、三人のやり取りを微笑ましそうに見ていたが、ハウメア様がぱっと○○の方を見る。

「そうだ!この後、みんなで行動しない?」
「皆の特訓の様子も見ておきたいしな…。突然、強い力を持った魔神が現れたら対処しに行かないといけないし」
「良い案だよね!カナロア!ねえねえー!」
「うん、良い案だと思うよ。ハウメア」

カナロア様が頷くと、ハウメア様はより一層自信を持って片手拳を握る。
底抜けの明るさを持っているハウメア様だが、カナロア様に背中を押してもらえるとなると益々元気が沸くようだ。

「ナビィちゃん!どこに行きたい?選び放題だよー!」
「むむむ、悩みます…」
「体力を付けたいならポリアフがいる山の方、素早さを磨きたいならポーエレたちが居る海辺の方!」
「ふむぅ…、ポーエレ様たちの所が気になります!」
「わかったー!じゃあ、ポーエレたちの所に行こっか」

ハウメア様とナビィがきゃぴきゃぴと話をしている。カナロア様は、傍らに立ち笑みを携えていた。
○○が、カナロア様に視線だけを向け盗み見ると、視線に気づかれ目と目が合った。
カナロア様は口パクでこう言った。

『二人とも、可愛いね』

さらりとこんな事を言っているが、別にワケア様やロヒアウ様のように女好きという訳ではない。
また、変な下心も感じさせない。カナロア様は、ただ純粋に、そう思っただけなのだ。

天然でイケメンというか何というか…嫌味の無い好青年である。

「二人とも、行くところ決まったよー!」

ハウメア様が満面の笑顔で、カナロア様と○○の方へ向き直る。
ハウメア様が○○の手を引く。太陽の光で輝く金色の髪を揺らして振り返る。

「行くのは海辺!いざ、しゅっぱーつ!」
「ハウメア、足元に気を付けてな」
「はーい!」

ハウメア様を先頭として、四人はポーエレ様たちがいる海辺へと向かった。


波が寄せては返す。
波に濡れた砂は明度暗く色濃く染まり、暫くすると波がまた寄せ砂を攫って行く。
感傷的とも言える波打ち際に立っているとはポーエレ様だった。

「……………」
「海が綺麗だね、ポーエレ。太陽の光で波が煌く様は、まるで君の瞳のようだ」
「……………」
「あ…見て欲しい。この桜貝、君の爪のように愛らしいよ」
「…………………」

ポーエレ様は口を閉ざし、目を細めて海を眺めていた。
正直、いまこの砂浜にある物全てを自分に例えられては敵わない。
波、貝殻、砂浜、太陽、魚……延々とこの男は語っている。
これはもしかしたら…いや、間違いなく、確信を持ってウザイ。

「……撒いたと思ったのに」
「僕、ポーエレの事なら何でも御見通しなんだ。だって、君の事を愛しているから」

自信満々に言うクムリポ様の方に一切視線は向けないポーエレ様。
このまま海に沈んでくれやしないだろうかと、ポーエレ様が考えていると、遠くから声が聞こえてきた。

「居た居た!ポーエレちゃんー!」
「……ハウメア!」
「あのね、ナビィちゃんが素早さの特訓をしたいって!だから、ここに連れてきたのー!」

心が荒みきっていたポーエレ様にとって、まさに癒しの女神、ハウメア様が現れた。
ナビィ、カナロア様、○○も同じく海辺へとやって来てポーエレ様たちと合流する。

「クムリポはやっぱりポーエレの所に居たんだね」
「勿論だよ。僕は、一秒たりともポーエレの傍から離れないんだ」
「ハウメア、ナビィ、一緒に特訓をしましょうか」
ポーエレ様はクムリポ様の脇を通り抜け、ハウメア様とナビィの傍に歩み寄る。
その後はもう、クムリポ様がいくらポーエレ様に話しかけても、返事は一切無かった。

「相変わらずポーエレは徹底して容赦ないな」
「そういうところも愛おしいよ、ああ…僕の女神ポーエレ」

二人の様子を見て、カナロア様は朗らかに笑っている。
見慣れた光景なのだろう。
ナビィ、ハウメア様、ポーエレ様の方を眺めていると、特訓をしているのかただ遊んでいるのか…ビーチバレーを始めていた。
確かに足腰を鍛えるのには良いと言うが果たして…。
…何はともあれ、隣で『運動をするポーエレがいかに美しいか』と延々と語り始めるクムリポ様の話を話半分で聞きながら、ポーエレ様たちの様子を見守るのであった。


ビーチバレーボールがぽーん、ぽーんと宙を舞っているのを眺める。
先程までの戦いから打って変わり、実に平和だ…とぼんやりしていると…。

ズゥゥン……と山の方から轟音が聞こえてきた。

「わわっ、な…何!?」

丁度飛んできたビーチバレーボールを受け止めたハウメア様。
ビーチバレーボールを抱きかかえながら、辺りを見渡す。
いち早く異変を察知したのはカナロア様だった

「……火山が噴火したみたいだな」
「かっ、火山がですか!?カナロア様、それって大丈夫なんでしょうか…」
「ペレは気性が荒いから、そこまで珍しい事ではないけれどね」

クムリポ様はそう言って、いたって落ち着いた様子で火山の方を見る。
火山からは確かに黒煙が立ち上っていたが、大惨事と言う程の規模ではない。
きっとポリアフ様が収めてくれれば何の問題も無い程度だろう。

「ペレったら、またポリアフと喧嘩中なのかしら?あの子も気が短いわねぇ」

ポーエレ様が溜息を吐く。その直後、近くから別の声が聞こえてきた。

「火山、怖いー…!」
「ロンゴ、落ち着いて大丈夫だよ。そんなに大きい地震じゃないから…」

ロンゴ様とタネ様も近くに居たようで、ロンゴ様は火山に狼狽えてタネ様の後ろに隠れていた。
カナロア様が二人に歩み寄り、ロンゴ様の肩に手を添える。

「大丈夫か?…このままだと、他にも不安に思っている神々も居るかもしれないな」
「一応、火山の方見に行く?」
「そうしましょうよ。これ以上火山が噴火しても困るわ」
「ポーエレが行くなら、僕も行くよ。安心してポーエレ…必ず守る」

ハウメア様たちが思案する。その間も、火山は噴火を続けている。
普段から気温の高い南の島だが、火山…いや、怒れるペレ様のお陰で更に気温が上がったように思える。

「そうだな。様子を見に行ってみるか」
「ペレの好物も途中で見繕って、持っていきましょうよ」
「それって凄く良い案!あとあと、途中で食べるサンドイッチも持っていく?」
「サンドイッチなら、私が準備するよ」

ハウメア様の発言で途端にピクニックへ行くかのような雰囲気になるが、本人たちは至って真面目の模様。
各々が準備を始めて、火山へ続く道に立つ。

「やっぱりこうやって、皆で一緒に何かをするの、楽しいね」

ハウメア様が全員の方を振り返り、笑顔で言う。

ハウメア様の明るさは皆の気持ちを癒す。自然と一行はそれぞれ笑みを零す。

「それじゃあ、行こうか、火山へ」
カナロア様がハウメア様の隣に立ち、一行を引き連れて歩き始める。
火山へ向かう途中、また他の神々にも出会う事だろう。
南の島での賑やかな特訓は、これからもまだまだ続きそうなのであった。