百神~ヒャクカミ~データwiki

喧騒乱舞!戯れのトリックスター ストーリー のバックアップ差分(No.1)


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「あっ!目が覚めたみたいです!チーフ!チーフ!」

はっと目を覚ますと、目の前で三つ編みの黒い髪が揺れる。
どうやらアウィテリンツタ様が○○の目が覚めるまで、傍で見守っていてくれたようだ。
彼女いわく、自分は赤土の大地で一人伸びていたらしい。

……一人で?

それまでの経緯をゆっくりと思い出す。


出口のないハロウィンパーティー会場に閉じ込められるも、
その主催であるファルとサイリスを打ち破りなんとか元の世界へ戻ってくることに成功したはずだ。

そしてその会場には、ナビィやスヴェイ、ヘレグを含む数十名の神様が集結していたが……。
自分しか見つかっていないとなれば、他の神様らは一体どこへ消えてしまったのだろうか。

「そなた、疲れしときは吾に頼るべし。吾思うに、苦難を乗り越えし後に見ゆる」

アウォナウィロナ様があたたかいスープを手にしながら、優しく声をかけて下さった。
湯気と共に、柔らかく甘い匂いが漂う。トウモロコシのスープだろうか。

「あんまり顔色が優れないですね……。そうだ!お兄ちゃんが狩りに出かけてますから、きっとおいしいご飯を用意できますよ!」

確かに、アポヤンタチ様と彼のトマホークが見当たらない。
アウィテリンツタ様いわく、時間的にそろそろ戻ってくる頃合だという。
アウォナウィロナ様からスープを受け取り口に運んでいるうちに、外から足音が近づいてくることに気付いた。

「チーフ、アウィテリンツタ、今帰った……ん?目を覚ましたんだな」
「お兄ちゃん!おかえりなさい!ちょうど今お兄ちゃんの話をしていた所でした!」
「そうなのか?…そうだ、さっきプテサンウィに出会ったんだが赤土の神様で集まろうと言っていたんだ」
「? プテサンウィさんが?なんだろー!」
「それはねー!」

突然聞こえてくるプテサンウィ様の声。その方向を見やると、プテサンウィ様がすごいスピードで駆け寄ってきていた。

「他の地域の神様のとこに、招待状って言うのが来てたんだって!」
「招待状って?…それって何の招待状なんですか?」

プテサンウィ様の一言にいまひとつピンと来ない表情の神様達。
しかし、○○は招待状と言う単語に聞き覚えがあった。

「パーティーの招待状だってー!でも、差出人がわからないとか?」
「招待状…吾が家族のもとへは未だ来ず」
「ちょっと他の地域の神様の間で軽くウワサになってるみたいなんだー!」

やはり、神様達は招待状がどういった意図で配られた物なのかは把握していないようだ。
情報が広まっていないだけか、あの場にいた神様達はまさかあの空間に取り残されたままなのか――などと一瞬いやな予想が脳裏をよぎる。が。

「それでねー、そのパーティーにあわせてアタシ達もなにかしちゃおーよ!」
「便乗するってことですね!楽しそう!」
「ギリシャのパンドラやエジプトのオシリスも、もう会場につくころじゃないかなー!」

この会話ではっと気付かされる。
呼ばれていない神様の間ではあの出来事はまだ起きていないようだ。
あの空間から解放されたとき、ほんの少し過去の時間軸に放り出されてしまったのだろうか……。
神様達があの空間に取り残されている、と決まったわけではないようだ。
希望が持て、少しばかり心に余裕ができた。

とはいえ、まだ状況がわかりきっていない以上、あの空間で起きたことに関しては口をつぐんでいることにした。
未来から過去に来る神様達が、そこから将来が変わってしまわないよう細心の注意を払っていたことを思い出しつつ、目の前にいる赤土地域の神様達に再度耳を傾ける。

「どんなパーティーがいいかなー?どうせならジャーキーいっぱい食べたいねー!」
「さっきちょうど狩りに出ていたからな、早めに準備しよう。マサウたちも呼ぶか」
「いいですねー!チーフ、一緒にピーナッツクッキーたっくさん焼きましょー!」
「うむ。ケーキ、ナバホタコ、ジャーキー……そなた、好きな物を吾に伝えよ。吾が友のため、馳走を用意す」

赤土の神様達は、既にパーティーのことで頭がいっぱいなようだ。
その楽しそうな意見交換を聞いていると、完全に無くなるわけではないが不思議と不安な気持ちが収まっていく。
いつの間にかパーティーの準備に駆り出されつつ、○○の顔にはほんのりと笑顔が戻ってきていた。


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